へバーデン結節とは?
手の指には関節があります。その中で、爪の下にある第1関節(DIP関節)に痛みや腫れを引き起こすのがへバーデン結節と言います。
こんな症状はありませんか?
- 指を軽くぶつけるだけで激痛
- 指を使っていないのにズキズキと痛む
- 髪の毛を洗うときに指先が痛む
- 指先でキーボードを打つと痛む
- 痛みで力が入らないので、よく物を落とす
- ピアノを弾くと指先に痛みが走る
- 指先の関節がゴツゴツとし赤く腫れている
このような症状がある場合はへバーデン結節の可能性があります。
へバーデン結節の症状
へバーデン結節には代表的な症状が3つあります。
- 痛み
- 腫れ
- 変形
へバーデン結節の痛みについて
へバーデン結節では、指先の第1関節に痛みを感じるようになります。
- ピアノを弾くと痛みが出るので練習できない……
- お皿を洗っている時、指先を軽くぶつけるだけで激痛
- 指先の痛みで手に力が入らないので、お皿を落として割ってしまう……
- 指が痛くて包丁が握れない
- 指先で電車のつり革を持てない
- 指の激痛でボールペンで字が書けない
- ミニトマトをつまむだけで激痛
- コーヒーカップを持てない
- ハサミで紙を切る事ができない
このように、へバーデン結節の痛みがあると、日常生活で指自体を動かす事が億劫になっていきます。
そうすると、何が問題になるのでしょうか?
それは、関節拘縮を起こす事が問題なのです。
では、関節拘縮とは何かと言うと、関節自体が固まってしまい、指の曲げ伸ばしができなくなるのです。
へバーデン結節の関節拘縮:指の第1関節のシワが無くなるのが特徴です
指の激痛で、指を動かさなくなると、関節拘縮を起こし、指が棒のようになり、指の曲げ伸ばしが全くできなくなる事がるので注意が必要です。
へバーデン結節の腫れについて
へバーデン結節の代表的な症状の1つとして、関節の腫れがあります。
- 指先の関節が赤い……
- ズキズキと熱感を感じる……
- 以前、入った指輪が入らなくなった……
- 指を曲げるとこわ張る……
このような症状がある場合はへバーデン結節の可能性があります。
へバーデン結節の腫れが強くなると、指全体が浮腫んで、指のこわばりを感じるようになるので「リウマチではないか?」と不安を感じるようになる人もいます。
では、なぜ、へバーデン結節で関節が腫れが起こるのでしょうか?
それは、滑膜炎を起こすからです。
関節は、骨と骨をつなぐための「関節包」という靭帯性組織で繋がれています。
この関節包の内側に「滑膜」という膜があります。
この滑膜が軟骨のすり減りで「滑膜炎」を起こします。
そして、この滑膜炎がひどくなると、関節液が過剰に分泌されるので、いわゆる「関節に水が溜まる」という状態になります。
この「関節に水が溜まる」という状態が、へバーデン結節で関節の腫れを引き起こすのです。
そして、へバーデン結節の腫れの一番の問題は、関節の変形を進行させるという事です。
この滑膜から過剰に分泌された関節液の中には、軟骨を破壊する成分が含まれています。
そのため、へバーデン結節の腫れを長期間放置する事は、変形を進行させる事になるのです。
痛み・腫れが強くなる → 関節に水が溜まる → 変形が進行
この悪循環は、へバーデン結節の症状を強くしてしまうのでバーデン結節の腫れを放置する事はお勧めできません。
へバーデン結節の変形について
へバーデン結節の腫れが長期化すると、指先が曲がり、指先の関節が太くなる変形が起こります。
へバーデン結節の代表的な症状の1つとして、関節の腫れがあります。
- 指先だけ右に曲がってきた
- 指先がゴツゴツしてるって孫に言われた
- 最近、指の関節の節々が太くなった気がする……
- 指先だけが曲がっているので、人前で手を出すのが恥ずかしくなってきた……
変形が進行すると、自分で見ても明らかに手の形状が変わった事に気付きます。
関節は本来、丸みを帯びた形をしています。
しかし、関節の変形が進行すると、関節の丸みが無くなり、ゴツゴツした鬼の角のような突起が出てきたり、指先が曲がるなどの変形が起こります。
ここまで変形が進行すると、さすがに指の変形が目立つようになります。
すると、女性の方は(人に手を見られたくない……)という心理的負担を感じるようになります
一度、変形した関節は、元に戻す事は難しいので、早い段階で適切な処置をする事が望ましいです。
へバーデン結節の原因は「使い過ぎ」と「ホルモンバランス」
でも、「私はそんなに手を使ってないんですけどねー」と思うかもしれません。
- 料理や掃除などの家事全般
- 仕事でのパソコン業務
- ピアノ・バイオリンなどの演奏
このように、指先への負担が積み重なる事で軟骨のすり減りが起こります。
こんな少しの負担で軟骨のすり減りが起こるのかと思うかもしれません。
でも、女性は、男性と比べて、軟骨が柔らかく、関節を支える筋力も弱いため、関節軟骨のすり減りが起こりやすいのです。
そのため、へバーデン結節は女性に多くみられるのです。
でも、不思議な事に軟骨のすり減りだけで、へバーデン結節の痛み・腫れが起こる訳ではありません。
では、なにがあるのでしょうか?
それは、軟骨のすり減りに、女性ホルモンの減少が加わると、へバーデン結節の痛み・腫れが起こりやすくなるのです。
女性は40歳を過ぎてから女性ホルモン(エストロゲン)が減少していきます。
この女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、関節の炎症を起こしやすくなります。
そのため、へバーデン結節は40代以上の女性に多くみられるのです。
どんな人がへバーデン結節になるのか?
【職業別 症状】
主婦
主婦の方は、掃除・洗濯・庭の手入れなど、細かい仕事が多くあります。
これらの家事によりヘバーデン結節を発症します。
また、妊娠・出産時のホルモンバランスの変化で、出産後にへバーデン結節を発症するケースも見られます。
代表的な症状
- 洗い物をすると指先が痛い
- 洗濯機から洗濯物を取り出すときに痛む
- 指先の痛みで、よく物を落とす
- 料理を出す時、お皿を指先で持つと痛む
- カバンから物を出すとき痛む
- 財布の小銭を出すときに痛む
- 孫と手を繋ぐと痛い
また、お孫さんに指先の変形を指摘される事で、変形を意識するようになり、人前で手を出す事を戸惑うようになってしまう人も見られます。
音楽家(ピアノ・チェロ・チェンバロ・琵琶・ギター)
音楽家のへバーデン結節は使い過ぎが原因で起こります。
代表的な症状
- ピアノを弾くと痛みが出る
- 指先の痛みが不安で強く鍵盤を叩けない
- チェロ・ギター・琵琶などの弦楽器は痛みで弦を押さえられない
- 指の痛みで、正確な指の形で弦を押さえる事ができない
- 手をかばうので演奏スピードが落ちる
演奏ができなくなると、練習に身が入らないので不安が強くなり、自信を無くす傾向があります。
ジュエリーデザイナー 美容師 ネイリスト
手先を使われる職業の方は、指先を曲げて力を入れる作業などがへバーデン結節を引き起こします。
代表的な症状
- 髪の毛を洗う時に指先が痛む
- 痛みで工具を何度も落としてしまう
- ハサミを持つと痛む
- ペンを持つと痛む
SE・オペレーター
近年、仕事でパソコンの使用が多くなる事が指先の負担になり、へバーデン結節を発症するケースが増えています。
代表的な症状
- キーボードを叩くと痛む
- カバンを持つと指が痛む
介護職
介護の現場では、年配の方を支るため、手先に力を入れる事が多いため、へバーデン結節を発症します。
代表的な症状
- ベッドから起き上がるのを支えるため、ベッドと体の下に手を入れた時に痛む
- 入浴介助で体を支えると痛む
- 手を握られた時に指先に激痛が走る
- レクリエーションでピアノを弾くと指が痛む
電気工事の作業員
指先に強い力を加える仕事が多い人がへバーデン結節を発症します。
主に、男性が多く、痛みを我慢して仕事をするので、来院される時は指先の激痛と強い腫れがみられるのが特徴です。
代表的な症状
- 親指で配線を強く抑え込むと親指が痛む
- 痛みで工具を押さえられない
- 機材を持つと痛む
- 指の痛みで車のハンドルが握れない
格闘家(ブラジリアン柔術・柔道)スポーツ(ゴルフ・バレーボールなど)
格闘技の初心者の方がへバーデン結節を発症します。
男性に多く、指に力が加わった時に痛みが出るのが特徴です。
代表的な症状
- 指先を捻る力が加わると痛む
- 相手の道着を掴んで、手前に強く引き寄せると痛む
- ゴルフの練習後、指先がジンジンと痛む
指先(第一関節)の痛み・腫れ・変形は慢性関節リウマチではありません
しかし、慢性関節リウマチの場合、指の第1関節に症状が起こる事は殆どありません。へバーデン結節と慢性関節リウマチの違い
へバーデン結節 | 慢性関節リウマチ | |
---|---|---|
部位 | 指の第1関節 | 指の第2関節~手足 全身の関節 |
発熱 | なし | あり |
朝のこわばり(30分以上) | なし | あり |
RA・抗CCP抗体・CRP | 陰性 | 陽性 |
上図から分かるように、指の第1関節の症状は、リウマチの心配はありません。
プシャール結節を併発している場合は要注意
プシャール結節も軟骨のすり減りにより起こる疾患なので、へバーデン結節と殆ど違いはありまりません。
赤:指の第1関節(DIP関節)
緑:指の第2関節(PIP関節)
へバーデン結節 | プシャール結節 | |
---|---|---|
部位 | 指先の第1関節(DIP関節) | 指の第2関節(PIP関節) |
ただし、指の第2関節に痛み・腫れがある場合は注意が必要です。
それは、なぜでしょうか?
指の第2関節(PIP)に症状がある場合は、慢性関節リウマチの可能性があるからです。
そのため、指の第2関節に痛み・こわばりがある場合は、医療機関に相談される事をお勧めします。
へバーデン結節以外で指に痛みを引き起こす病気は?
慢性関節リウマチ
指に痛み・腫れ・変形を引き起こす代表的な疾患が慢性関節リウマチです。
朝、起きてから30分以上続く手のこわばりが特徴です。
ただ、慢性関節リウマチでは、指の第1関節には症状が出ないという特徴があります。
頸椎椎間板ヘルニア・頸椎症性神経根症
首が原因で指先に痛みが起こる事があります。
へバーデン結節とは違い、首~腕全体に痛み・シビレを起こすのが特徴で、指先は、母指・示指・中指の手の平側に痛み・シビレを起こすのが特徴です。
【理学所見】
首の前屈・後屈・横を向いて上を向くという動作で症状が強くなる場合は、首が原因と考えて間違いありません。
ばね指
指の使い過ぎで指の付け根痛みが起こるのがばね指です。
ばね指は、症状が悪化すると、指の曲げ伸ばしで引っ掛かりを感じるようになります。
ばね指・指の腱鞘炎の場合、上図の場所に圧痛が出ます。
手根管症候群
手首の腱鞘炎の1つで、指先の痛み・シビレを引き起こし、症状が進行すると、母指球の萎縮を引き起こします。
上記写真の右手親指の場所を押したり、叩いたりすると痛み・シビレが出るのが特徴です。(チネル徴候)
また、両手首を曲げる事で指先に痛み・シビレが出ます。(ファレン テスト)
肘部管症候群
肘をぶつけて、ジ~ン!となった事はありませんか?
ぶつけて、ジ~ン!となる所を肘部管といい、尺骨神経が走っています。
この尺骨神経は小指側(尺側)の肘から指にかけての筋肉を動かしたり、感覚を伝えたりする神経でが、尺骨神経に炎症や血流障害が起こると薬指~小指にかけて痛み・シビレを引き起こします。
この肘部管を叩いた時に薬指~小指にかけて痛み・シビレを確認できます。(チネル徴候)
チネル徴候が出た場合は肘部管症候群です。
糖尿病性神経障害
糖尿病が進行すると、手を使わない時にも「じんじん」「ぴりぴり」とした強い痛みが指先に走ります。
糖尿病性神経障害を手先に感じる場合、糖尿病がかなり進行した状態ですので血糖管理がとても重要となります。
へバーデン結節と他疾患の見分け方
先程のように、色々と疾患があると分からなくなると思います。
ただ、へバーデン結節と先程、羅列して疾患との見分け方があります。
ヘバーデン結節では、主に、手の甲側の関節に症状が出るのに対して、頸椎椎間板ヘルニア・ばね指・肘部管症候群・手根管症候群は、手掌側に症状が出るのが特徴です。
そのため、指の第1関節の手の甲側に症状がある場合は、へバーデン結節と考えてもいいでしょう。
へバーデン結節と関節嚢腫(ミューカストシス)
ヘバーデン結節が発症すると、手の爪の付け根~第1関節の間にポコッ!としたガングリオンのような膨らみができる事があります。
このガングリオンのような膨らみを「粘液のう腫」といい、別名:ミューカストシスと呼ばれます。
粘液のう腫は、軟骨のすり減りにより関節の隙間が狭くなる事で、関節を包む靭帯(関節包)に緩みが起こります。
特徴としては、直径2〜5mmの大きさで、大きくなったり小さくなったりします。
この粘液のう腫は、悪さをする事がありませんが、治療をする事で小さくなる事があります。
粘液のう腫の注意点
この指の粘液のう腫の膨らみを自分で穿刺して中身を出そうとする人がいますが、関節の感染症を引き起こすリスクがあります。
もし、関節の膨らみが気になる場合は、必ず、医療機関で処置をしてもらうようにしてください。
ヘバーデン結節なのに、私は痛くて、知り合いは痛くない理由は?
患者さんとお話をしていると「同じヘバーデン結節でも、私は痛くて仕方がないのに、友達は痛く無いって言うんです。なぜでしょうか?」といわれる事があります。
同じヘバーデン結節なのに、痛みに悩む人と、悩まない人がいるのは不思議ですよね。
なぜでしょうか?
それは、滑膜炎があるかどうかで決まります。
関節は、骨と骨をつなぐための「関節包」という靭帯性組織で繋がれています。
この関節包の内側に「滑膜」という膜があり、軟骨のすり減りで滑膜に炎症が起こり、
関節の痛み・腫れを引き起こすします。
ヘバーデン結節で悩んでいる人は、この滑膜炎があるから痛みで悩む事になるのです。
でも、痛みで悩まなかった人は、滑膜炎を殆ど起こす事なく、徐々に変形が進んだために、痛みを感じる事なく指が変形していったのです。
これは、個人差が大きいのですが、指先の軟骨がすり減っても、滑膜炎を起こさない場合があるのです。
同じヘバーデン結節で、痛みで苦しむ人・苦しまない人がいますが、それは、環境や個人差が大きいと理解してください。
へバーデン結節の変形は戻るのか?
残念ながら、一度、変形してしまった関節は元に戻りません。
そのため、へバーデン結節の変形を未然に防ぐためには、早期治療が重要です。
変形の心理的負担を軽くする方法
「指の変形があるからネイルができない」と言われる事があります。
ただ、指先の変形で心理的負担を感じるのであれば、むしろ、積極的にネイルをする事をお勧めします。
指先に色などをいれると、人の視線は変形して関節ではなくネイルの方に向かいます。
また、指先のケアは指先に意識がいくので治癒力が高まる事もあります。
そのため、へバーデン結節の変形で悩んでいる女性の方は、ネイルでオシャレをして、少しずつ、自信を取り戻すようにしていきましょう。
骨粗しょう症だからヘバーデン結節になるのか?
「骨粗しょう症だからヘバーデン結節になったのかしら?」と聞かれる事があります。
しかし、実際には、骨粗しょう症は、骨の硬さが低下する疾患であって、関節軟骨の強度を低下させる事はありません。
そのため、骨粗鬆症でへバーデン結節になる事はありません。
へバーデン結節を良くするには
現在に医療で、へバーデン結節はあまり、重要視されていない疾患です。
そのため、「これは治りません」と言われ、途方に暮れる人は沢山、いらっしゃいます。
ヘバーデン結節は適切な処置、施術をする事で、必ず、よくなる疾患です。
「へバーデン結節の治療方法」で、さらに理解を深めていきましょう。